逆流性食道炎(GERD)は、食道の疾患の中で特に症状を感じやすいもので、近年、日本人の10人に1人が患うとされているポピュラーな病気です。GERDの主な症状として、以下のようなものがあります:
- 胸やけやみぞおち付近の不快感
- すっぱいものがのどに込み上げる(呑酸)
- のどがつかえたような感じ
これらの症状は、食べ過ぎや脂っこい料理、香辛料の効いた料理を食べた後、前かがみの姿勢や横になったとき、重い物を持ち上げるなど、力んだときに感じやすくなります。
胸やけや呑酸が続くと食道がんのリスクも
GERDは長い間不快な症状に悩むだけでなく、食道がんへの進展リスクもあります。胃酸が食道に逆流し続けることで、食道下部の粘膜がダメージを受け、やがて別のタイプの細胞に置き換わっていく(バレット食道)ことがあり、これが食道がんの発生母地となります。
GERDの原因
GERDの原因は、「筋肉のゆるみ」「胃酸」「腹圧」の3つに大別されます:
- 筋肉のゆるみ:
- 食道下部の筋肉(下部食道括約筋)や食道裂孔が加齢によりゆるみ、胃からの逆流を抑えられなくなる
- 胃酸:
- 食生活の欧米化により脂っこい料理が増え、胃酸の分泌が増加
- ピロリ菌の除菌治療後、胃酸が増えて逆流することもある
- 腹圧:
- 内臓脂肪、悪い姿勢、力んだときなど、腹圧がかかることで胃が押し上げられ、食道への逆流が起こる
治療と予防
- 薬物療法:
- 胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)やヒスタミン受容体拮抗薬(H2ブロッカー)を使用。
- 長期使用には注意が必要で、医師の指示に従いながら減薬を検討。
- 生活習慣の改善:
- 腹圧対策:
- 肥満気味の人は体重を減らす
- きついベルトや猫背など、みぞおちを締めつける服装や悪い姿勢を避ける
- 胃酸対策:
- 夕食を早い時間に済ませる
- 脂っこいものや酸味・甘味の強いもの、アルコールやカフェインなど刺激の強いものを控える
- ゆるみ対策:
- 食後すぐに横にならない
- 寝るときは上半身を少し高めにする
- 左側を下にして寝る
- 腹圧対策:
逆流性食道炎に対する鍼灸治療は、症状の軽減や原因の根本的な改善を目指す自然療法の一環として有効です。以下は、逆流性食道炎に対する鍼灸のアプローチについての概要です。
鍼灸治療のアプローチ
- 気の流れを整える:
- 東洋医学では、逆流性食道炎は「胃の気逆」や「肝気鬱結」などの気の流れの乱れが原因とされます。鍼灸治療によって気の流れを整えることで、胃酸の逆流を抑えることができます。
- ツボの刺激:
- 逆流性食道炎に効果的なツボとしては、「内関(ないかん)」や「中脘(ちゅうかん)」などが挙げられます。これらのツボは胃の機能を調整し、消化器系のバランスを整えるのに役立ちます。
- 自律神経の調整:
- 鍼灸は自律神経系にも作用し、ストレスや緊張を緩和する効果があります。これにより、胃酸の分泌過多や筋肉の緊張を和らげ、症状の改善を図ります。
具体的な治療例
- 症状緩和のための施術:
- 内関(ないかん):腕の内側、手首の上に位置し、胃の不調を和らげる効果があります。
- 足三里(あしさんり):膝の下に位置し、消化機能を高め、胃腸の働きを促進します。
- 予防と体質改善:
- 中脘(ちゅうかん):お腹の中央にあり、胃の働きを整えるツボです。
- 肝兪(かんゆ):背中に位置し、肝臓の働きをサポートし、ストレス緩和に役立ちます。
日常生活のアドバイス
- 食事の改善:
- 脂っこい食事や過食を避ける。
- 消化に良い食材(鶏のささみ、白身魚、大根おろし、オクラ、山芋など)を摂取する。
- 姿勢の改善:
- 食後すぐに横にならない。
- 寝るときは上半身を少し高めにする。
- 仕事中や日常生活での猫背や前かがみの姿勢を避ける。
- ストレス管理:
- 適度な運動やリラクゼーションを取り入れる。
- 鍼灸による定期的なストレスケア。
鍼灸の利点
- 自然治療: 化学薬品に頼らず、自然の力で体のバランスを整えることができます。
- 全体的な健康改善: 逆流性食道炎の症状改善だけでなく、全身の健康を向上させる効果があります。
- 副作用が少ない: 薬物療法と比較して、副作用のリスクが低いです。
鍼灸院では、個々の患者様の体質や症状に合わせたオーダーメイドの治療を提供しています。逆流性食道炎でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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